この本の概要
自分以外の誰かに、自分の取り組んでいることを知ってもらうことは、フィードバックをもらえることを踏まえても大変意義があることです。また「自分が取り組んでいること」に共感してくれる誰かを見つけられるのであれば、この上なくラッキーでしょう。
インターネットが普及した現代社会では、誰もが発信の主体となることができます。しかし、「眼の前で取り組んでいることに精一杯で、発信なんてしている時間はない。自己アピールなんてできないよ…」という人は多いのではないでしょうか。
この本は、自己アピールが苦手で大嫌いな人のための本です。自己アピールに代わる手段を提供してくれます。
著者 | オースティン・クレオン 著 千葉 敏生 訳 |
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書店発売日 | 2014/08/05 |
ISBN | 9784788908154 |
- オースティン・クレオンの前作『“きみがつくるべきもの” をつくれるようになるために』が他者の影響を盗み取る本であれば、本書はみんなに君のアイデアを盗ませて、他者に影響を及ぼすコツを教える本です。
- 日夜、技術を磨いたり、仕事を覚えたりすると同時に、君と同じ関心を持つ人々に君の作品のファンになってもらうために必要なのは、作品を見せること。
※ 作品とは人材としての自分自身のことも指していると思われます!
見つけてもらいたいならば、まずは見つけられる状態になること
仕事の腕を磨くと同時に、君の作品を公開して、見つけられる状態にする必要がある
SHOW YOUR WORK! クリエイティブを共有!
天才と地才
創作とは、「孤高の天才」と呼ばれる、ほんの一握りの偉人にしかできないような孤独な行為だと思われがちだが、音楽家のブライアン・イーノは、創作についてより健全な考え方を提唱している。
「天才(Genius)」とは正反対の概念に「地才(Scenius)」という概念がある。 名案の多くは、アーティスト、理論家、流行のリーダーなど、”才能の生態系”を構成しているクリエイティブな人々の集団によって生み出される。 彼らはお互いに支え合い、作品を観察し合い、真似し合い、アイデアを盗み合う。
音楽家 ブライアン・イーノ
- 歴史をしっかり振り返れば、孤高の天才だと言われた偉人たちの多くが、本当はそうでなかったと分かる
創作活動は、常に”共同作業”であり、様々な人々の頭脳が結びついた結果であると認めるのが「地才」の考え方である
地才の構成要素であるアマチュアこそ共有に適している理由
アマチュアとは、名声・お金・出世に目をくれず、ひたすら愛を持っている活動を追求する情熱家である。フランス語で amateur は「愛好家」を意味し、他の人がくだらないとばかにしてこようが、アマチュアは全く気にする必要がない。
創作作品という意味では、平凡と傑作の差は大きい。しかしながら、平凡から傑作へと一歩ずつ進んでいくことはできる。 真のギャップは、“何もしないこと”と“何かすること”間にあるのだ。
作家 クレイ・シャーキー
- 作品を共有する第一歩は、「自分の学びたいことは何か」と考え、みんなの前で学習すると誓うこと。初めはどんなに下手くそでも構わない。アマチュア精神(愛情)を前面に押し出せば、同じものを愛する人がきっと君を見つけてくれるはず
成果でなくプロセスを共有しよう
あなた自身を除いて、作品を見る人にとって重要なのは成果です。つまり完成された作品。一方、あなたにとって重要なのは、プロセス。つまり作品を研ぎ澄ませていく体験です。
デイヴィット・ベイルズ、テッド・オーランド 共著『アーティストのためのハンドブック』
- 今では、インターネットやSNSを使えば、自分のプロセスを好きなだけ明かせる
- スケッチや製作中の作品を共有したり、影響や刺激を受けたもの、愛用の道具についてブログを書いたりすることだってできる
自分の行動をドキュメンタリーのように記録する
多くの人は、「結局のところ、見せるものなんて何もないよ」という気持ちで仕事をこなしている。でも、仕事の種類がなんであれ、その仕事特有の“技“があるはずだ。
だから、君自身の行動を記録するドキュメンタリー作家になろう
- まずは業務日誌をつけて、自分の考えをノートにまとめる。スクラップブックをつける
- 君の周囲で起きていることを記録していくだけで良い
1日1回、情報を配信する
- 何十年、何年、何ヶ月という単位で考えるのはやめて、「何日」で考えよう
- 「日」という単位は人間にとって理解できる唯一の単位だ。
- 1日1回、その日が終わったら、ドキュメンタリーづくりの時間にしよう
君のプロセスのうち共有できる小さな1ピースを見つける
- どのピースを共有するかは、今自分のプロジェクトがどの段階にいるかによって決まる
- 初期なら、影響や刺激を受けた人やモノについて共有する
- プロジェクトの真っ最中なら、君のやり方について書くのも良いし、製作中の作品について書くのもアリだ
- プロジェクトが終わった直後なら、完成品を見せたり、床に散らばった創作作品の残骸を見せたり、学んだことを書いたりしよう
完璧なものだけを投稿しなくて良い
あらゆるものの9割はクズである
SF作家のシオドア・スタージョン
厄介なのは、どのプロジェクトがクズで、どのプロジェクトが傑作かわからない点だ。だからこそ、作品を披露して、みんなの反応を確かめることが重要である。投稿するものが完璧である必要はない。
共有する前に「だからなに?」と問うようにしよう
- 画面の向こうにいる人にとって役に立つ、また面白いと思うからこそ、何かを共有するのであって、何でもかんでも共有すれば良いもんでもない。他人に何かを見せる時は、「だから何?」と問うようにしよう
- 考えすぎは禁物だが、投稿するか悩んだときは1日寝かしてから考えると良い
参照するときは必ずクレジットをつける
他人の作品を紹介するなら、まるで自分の作品のように、経緯と配慮をもって扱うべきだ。
紹介する作品のクレジットを明記しないと、制作者の権利を奪うだけでなく、共有した相手からその作品を深く調べる機会を奪うことになる。
- クレジットの目的は、紹介している作品の背景を紹介すること
- いつ、どこで、どのようにつくられたのか?
- 紹介する理由は?
- なぜ、注目に値するのか?
- もう一つクレジットで忘れがちなのが、「その作品を見つけた場所」を紹介すること
- 素晴らしい作品に出合うきっかけをくれた人に感謝を示すとともに、作品を共有した相手が同じインスピレーションを辿れるようにパンくずを残しておくこと
モノ、食べ物、顔を見せられた時にそのものに対する評価、つまりどれくらい好きになるか、価値があると思うかどうかは、その伝え方によって大きく影響を受けるのだ。
心理学教授のポール・ブルーム
作品は物語らない、物語る人が必要だ
人間は目の前のものがどこから来て、どうして誰によって作られたのか知りたいものだが、作品は語ってくれない。優れた物語とは?どうすれば優れた物語を語れるのか?これを理解する必要がある。
君が自分の作品についてどのように語るかによって、人々の感じ方や作品に対する理解の仕方に大きな影響が出る。君自身や君の作品をもっとうまくみんなに知らしめたいなら、物語の腕を磨くことが重要だ。
優れた物語は構成が10割
- 人生の大部分は雑然としていて、不安定で不合理な一方で、良い物語構成とは、整然としていて、安定感があり、論理的なものだ
- 時には、人生を物語らしきものにはめ込むためには、大幅なカットや編集が必要になることがある。また、聞き手の時間を尊重して、分かり易い言葉で簡潔に伝えること
結末まで至った物語の場合
Pixarで絵コンテを担当していたエマ・コーツは、おとぎ話の基本的構成を、虫食い作文のような形式でまとめている。
むかしむかし、____。毎日、___。ある日、____。その結果、____。その結果、____。そしてとうとう、____とさ。
エマ・コーツ
小説家のジョン・ガードナーは、ほとんどの物語に共通する基本的な筋書きは次のようだと述べた。
登場人物が何かを欲しくなる。 周囲の反対(と自分自身の迷い)を押し切って追い求める。 そして、勝ち、負け、引き分けのいずれかに終わる。
小説家 ジョン・ガードナー
この単純明快な法則は、大半のプロジェクトに当てはまる。
結末がまだ分からない物語の場合
- 自分が物語の真ん中にいて、どんな結末を迎えるかさっぱり分からないことを認める
- 結末が分からないもの(クライアント向けのプレゼン・エッセイ・資金調達の依頼など)の多くがセールスピッチである。
- 優れたセールスピッチは3幕構成になっている
- 第1幕は過去、今までの歩みであり、何が欲しくて、なぜ欲しくなったのか、それを手に入れるためにどんなことをしてきたのか?
- 第2幕は現在、今までどんな苦労をしてきたのか?
- 第3幕は未来、どこへ向かっているのか?ピッチの相手はどんな手助けが出来るのか?
やってみて、共有って難しい
以上、自分のプロジェクトを共有するメソッドを紹介する『SHOW YOUR WORK! クリエイティブを共有!』をまとめました。
私は、この本を読んだことをきっかけにブログでの共有を始めてみました。トライしてみて分かることは、誰かに共有するための言葉を選ぶこと・自分が感じたことを文字に起こすこと、どれもとても難しいです。
2022年9月1日付で、新規事業の提案部署に異動するという入社以来初めての部署異動があります。新しい業務に必要になるであろうスキルセットとして、『デザイン思考』『物語力』『共感力』。以上のスキルを研鑽していこうと考えています。
この先、新規事業提案に取り組む人・ひとつのアイデアを磨き上げる過程に興味がある人に役立つパンくずになったら嬉しいです。また、次回の投稿で。
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